2010/12/05 15:28:17
私は目を疑った。
目を覚ますと私を見下ろすように小さな少年がいた。
艶のある黒髪に異国とのハーフを思わす銀の瞳。尚且つ、まだ年端も生きてはいないだろうと言えるのに見目麗しい少年。
もしかすれば、髪を伸ばしているから少女とも捉えられるが、それはないと。
「貴方は誰でしょうか?」
私は少年に話し掛けた。だが少年は私をただ見下ろすのみ。
どうしたのだろうと自身を見やる。と。
「……そうでした」
私はシーツ以外に肌を隠すものがなかった。服を着ていないのだ。
「露出狂?」
「断じて違いますが、私がこのような格好をしている時点で無理な話しですけど」
そう。私が反論したところで現場を見られては何も返す言葉がない。
ですが、何度でも言いましょう。
断じて露出狂、痴女、変態などの意味を持つ人間ではないと。
私は自分に言い聞かせて、少年を見返す。だけど、少年は苦い笑みを浮かべて返す。
「いいや、貴女がそう言うなら僕は信じるよ。だって貴女は灼燿なのでしょ?」
「灼燿、ですか? それに貴方は信じるのですか? こんな格好の私を……」
「うん。別にしたくてそんな格好な訳じゃないんでしょ?」
「はい。目を覚ました時にはもうこのような格好でしたね」
「なら僕は信じるよ。それと、寒いでしょ? これを着ると良いよ」
少年はそう言ってどこからともなく洋服を出した。母親の服と言ってますが、どう言った手品でしょう?
私はとりあえずその好意に甘え、服を手に取り着替え始める。
ん……。どうして後ろを向くのでしょうか?
彼は私が着替えを始めると顔を背けた。……なるほど。恥ずかしいんですね。
私の姿はシーツを払うと全裸。小さな少年と言えど女性の裸には目を背けたくなるのでしょう。洋服を着つつそう納得した。
ですが、恥ずかしがらなくても良いのに。私は初な少年にクスッと笑みを零した。
その後はスムーズに着替えて行き、最後にズボンを穿き終える。
「んー。少し緩いですが大丈夫でしょう。えーと、着替え終えました」
私は少年に呼びかけた。
少年は桜の木を見上げるのを止め、こちらに向き合ってくる。
「あれ? 早かったね」
「そうですかね? それで貴方は一体ですか? 此処に来たのは……」
「君を迎えに来た。ただそれだけ――」
「……どういうことですか?」
私は眉を潜め少年の目を見つめる。すると、私とともにあった古びた本が少年の脇にある。
「君が灼燿で僕が銀灰だから」
「銀灰……だから」
「そう。久しぶりだね、灼燿」
「銀灰?……ぐっ」
頭が痛い。どうしてなの。
銀灰。その名が頭を掻き回す……。
これは……あの人が……あの少年が。昔から知っている、我が――
「じゃあ僕は消えるよ」
「まっ!」
「僕は昔の、前世の僕とは全く違う。だけど、僕に力を貸してやってくれ」
「銀灰……」
「灼燿。君は君の道を、そして、新たな主であるこの子を――」
「我が主……」
少年は電源が落ちたかのように意識を失う。私は倒れる少年を抱き止め、横にさせた。当然、地べたは痛いため膝に乗せましたけどね。そして、髪を優しく撫でる。
「……我が主。よく似ています。ですが今回は少し違うのですね。――全てを消して新たな生を受け入れた」
スヤスヤと吐息を立てる少年を見つめながら呟く。
「灼燿。我ら一同をどこまでも共に……」
灼燿と改めた少女は少年が目を覚ますまでずっと、少年を見つめながら優しげで、哀愁が漂う歌を唱う。
最後にこの曲を歌ったのはあの頃――
銀灰が全てに絶望する数日前の晩のことだった。しかし、今語ることはない。
この世界で幸福を新たな小さき主――
To be continued....
目を覚ますと私を見下ろすように小さな少年がいた。
艶のある黒髪に異国とのハーフを思わす銀の瞳。尚且つ、まだ年端も生きてはいないだろうと言えるのに見目麗しい少年。
もしかすれば、髪を伸ばしているから少女とも捉えられるが、それはないと。
「貴方は誰でしょうか?」
私は少年に話し掛けた。だが少年は私をただ見下ろすのみ。
どうしたのだろうと自身を見やる。と。
「……そうでした」
私はシーツ以外に肌を隠すものがなかった。服を着ていないのだ。
「露出狂?」
「断じて違いますが、私がこのような格好をしている時点で無理な話しですけど」
そう。私が反論したところで現場を見られては何も返す言葉がない。
ですが、何度でも言いましょう。
断じて露出狂、痴女、変態などの意味を持つ人間ではないと。
私は自分に言い聞かせて、少年を見返す。だけど、少年は苦い笑みを浮かべて返す。
「いいや、貴女がそう言うなら僕は信じるよ。だって貴女は灼燿なのでしょ?」
「灼燿、ですか? それに貴方は信じるのですか? こんな格好の私を……」
「うん。別にしたくてそんな格好な訳じゃないんでしょ?」
「はい。目を覚ました時にはもうこのような格好でしたね」
「なら僕は信じるよ。それと、寒いでしょ? これを着ると良いよ」
少年はそう言ってどこからともなく洋服を出した。母親の服と言ってますが、どう言った手品でしょう?
私はとりあえずその好意に甘え、服を手に取り着替え始める。
ん……。どうして後ろを向くのでしょうか?
彼は私が着替えを始めると顔を背けた。……なるほど。恥ずかしいんですね。
私の姿はシーツを払うと全裸。小さな少年と言えど女性の裸には目を背けたくなるのでしょう。洋服を着つつそう納得した。
ですが、恥ずかしがらなくても良いのに。私は初な少年にクスッと笑みを零した。
その後はスムーズに着替えて行き、最後にズボンを穿き終える。
「んー。少し緩いですが大丈夫でしょう。えーと、着替え終えました」
私は少年に呼びかけた。
少年は桜の木を見上げるのを止め、こちらに向き合ってくる。
「あれ? 早かったね」
「そうですかね? それで貴方は一体ですか? 此処に来たのは……」
「君を迎えに来た。ただそれだけ――」
「……どういうことですか?」
私は眉を潜め少年の目を見つめる。すると、私とともにあった古びた本が少年の脇にある。
「君が灼燿で僕が銀灰だから」
「銀灰……だから」
「そう。久しぶりだね、灼燿」
「銀灰?……ぐっ」
頭が痛い。どうしてなの。
銀灰。その名が頭を掻き回す……。
これは……あの人が……あの少年が。昔から知っている、我が――
「じゃあ僕は消えるよ」
「まっ!」
「僕は昔の、前世の僕とは全く違う。だけど、僕に力を貸してやってくれ」
「銀灰……」
「灼燿。君は君の道を、そして、新たな主であるこの子を――」
「我が主……」
少年は電源が落ちたかのように意識を失う。私は倒れる少年を抱き止め、横にさせた。当然、地べたは痛いため膝に乗せましたけどね。そして、髪を優しく撫でる。
「……我が主。よく似ています。ですが今回は少し違うのですね。――全てを消して新たな生を受け入れた」
スヤスヤと吐息を立てる少年を見つめながら呟く。
「灼燿。我ら一同をどこまでも共に……」
灼燿と改めた少女は少年が目を覚ますまでずっと、少年を見つめながら優しげで、哀愁が漂う歌を唱う。
最後にこの曲を歌ったのはあの頃――
銀灰が全てに絶望する数日前の晩のことだった。しかし、今語ることはない。
この世界で幸福を新たな小さき主――
To be continued....
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