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2010 / 12
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 私は目を疑った。
 目を覚ますと私を見下ろすように小さな少年がいた。
 艶のある黒髪に異国とのハーフを思わす銀の瞳。尚且つ、まだ年端も生きてはいないだろうと言えるのに見目麗しい少年。
 もしかすれば、髪を伸ばしているから少女とも捉えられるが、それはないと。

「貴方は誰でしょうか?」

 私は少年に話し掛けた。だが少年は私をただ見下ろすのみ。
 どうしたのだろうと自身を見やる。と。
「……そうでした」

 私はシーツ以外に肌を隠すものがなかった。服を着ていないのだ。

「露出狂?」
「断じて違いますが、私がこのような格好をしている時点で無理な話しですけど」

 そう。私が反論したところで現場を見られては何も返す言葉がない。
 ですが、何度でも言いましょう。
 断じて露出狂、痴女、変態などの意味を持つ人間ではないと。
 私は自分に言い聞かせて、少年を見返す。だけど、少年は苦い笑みを浮かべて返す。

「いいや、貴女がそう言うなら僕は信じるよ。だって貴女は灼燿なのでしょ?」
「灼燿、ですか? それに貴方は信じるのですか? こんな格好の私を……」
「うん。別にしたくてそんな格好な訳じゃないんでしょ?」
「はい。目を覚ました時にはもうこのような格好でしたね」
「なら僕は信じるよ。それと、寒いでしょ? これを着ると良いよ」

 少年はそう言ってどこからともなく洋服を出した。母親の服と言ってますが、どう言った手品でしょう?
 私はとりあえずその好意に甘え、服を手に取り着替え始める。
 ん……。どうして後ろを向くのでしょうか?
 彼は私が着替えを始めると顔を背けた。……なるほど。恥ずかしいんですね。
 私の姿はシーツを払うと全裸。小さな少年と言えど女性の裸には目を背けたくなるのでしょう。洋服を着つつそう納得した。
 ですが、恥ずかしがらなくても良いのに。私は初な少年にクスッと笑みを零した。
 その後はスムーズに着替えて行き、最後にズボンを穿き終える。

「んー。少し緩いですが大丈夫でしょう。えーと、着替え終えました」

 私は少年に呼びかけた。
 少年は桜の木を見上げるのを止め、こちらに向き合ってくる。

「あれ? 早かったね」
「そうですかね? それで貴方は一体ですか? 此処に来たのは……」
「君を迎えに来た。ただそれだけ――」
「……どういうことですか?」

 私は眉を潜め少年の目を見つめる。すると、私とともにあった古びた本が少年の脇にある。

「君が灼燿で僕が銀灰だから」
「銀灰……だから」
「そう。久しぶりだね、灼燿」
「銀灰?……ぐっ」

 頭が痛い。どうしてなの。
 銀灰。その名が頭を掻き回す……。
 これは……あの人が……あの少年が。昔から知っている、我が――

「じゃあ僕は消えるよ」
「まっ!」
「僕は昔の、前世の僕とは全く違う。だけど、僕に力を貸してやってくれ」
「銀灰……」
「灼燿。君は君の道を、そして、新たな主であるこの子を――」
「我が主……」

 少年は電源が落ちたかのように意識を失う。私は倒れる少年を抱き止め、横にさせた。当然、地べたは痛いため膝に乗せましたけどね。そして、髪を優しく撫でる。

「……我が主。よく似ています。ですが今回は少し違うのですね。――全てを消して新たな生を受け入れた」

 スヤスヤと吐息を立てる少年を見つめながら呟く。

「灼燿。我ら一同をどこまでも共に……」
 灼燿と改めた少女は少年が目を覚ますまでずっと、少年を見つめながら優しげで、哀愁が漂う歌を唱う。
 最後にこの曲を歌ったのはあの頃――

 銀灰が全てに絶望する数日前の晩のことだった。しかし、今語ることはない。
 この世界で幸福を新たな小さき主――

 To be continued....
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天宮翔

Author:天宮翔
星座:牡羊座
趣味:テニス/読書
特技:習字/書道/写真を撮ること
好きな食べ物:ペスカトーレ
嫌いな食べ物:紅生姜
好きな学科:国語/公民

初めましての方は初めまして。私の小説を読んだことがある方はどうぞいらっしゃいました。
天宮翔です。もしくは天翔です。
此処では不定期ですが短編小説を書き下ろしていこうと思っています。他にもアニメやゲームその他諸々を語っていこうと思います。

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